第5章

三一四号室は、病院の最も離れた一角にあった。廊下は消毒液と、それより不快な何かの匂いがした。ドアを押し開けると、吐き気を催すような悪臭が鼻を突き、思わずえずいてしまった。

「ほう、ほう……こいつはまた、何とも」古川は私を見るなり、その目を爛々と輝かせた。「可愛らしいお嬢ちゃんだな。こっちへおいで」

私は嫌悪感を押し殺し、職業的な笑顔を浮かべた。「おはようございます、古川さん。新しく担当させていただく看護助手の絵里です」

「絵里……可愛い子にぴったりの名前だ」彼はシミだらけの手を伸ばし、何かを掴むような仕草をする。「こっちへおいで、お嬢ちゃん。古川には特別な『お世話』が必要なんだよ」...

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